青色申告で貸倒引当金の繰入で節税を行おう
目次
貸倒引当金の繰入
貸倒引当金とは
貸倒引当金とは、金銭債権(売掛金、未収入金、貸付金など)が、取引先の倒産などで回収不能となる可能性に備えて計上する引当金です。
仕訳例:
(借方)貸倒引当金繰入額(費用) xxx円 / (貸方)貸倒引当金(負債) xxx円
貸倒引当金は会計上の概念であって、現在では貸倒引当金の計上(繰入額の損金算入)については、一定の要件を満たさない限り税務上の費用にすることができないこととなっています。
青色申告事業者は貸倒引当金で節税可能(一括評価)
貸倒引当金は、金銭債権が回収不能になることに備えて計上されますが、回収不能となる割合、すなわち取引先が倒産するなどの可能性が何%になるかを見積もることは通常困難です。また、その割合が本当に正しいのか証明することは事実上不可能です。
そこで、所得税法では、金銭債権の額に対して貸倒引当金として計上できる割合が決められています(所得税法施行令第145条第1項第1号)。
- 事業所得がある青色申告者であること
- 金銭債権(売掛金、貸付金など)が、その事業の遂行上生じたものであること
- 個別評価の対象となる金銭債権でないこと
- 貸倒引当金勘定に繰り入れた金額が、年末の金銭債権の帳簿価額合計額の5.5%以下(金融業3.3%以下)であること
これらの要件を満たす場合、貸倒引当金繰入額の費用が税務上の費用(必要経費)として認められることとなります。
青色事業者以外でも貸倒引当金は設定可能だが、対象は狭い(個別評価)
一括評価の金銭債権に対する貸倒引当金に対して、個別評価の金銭債権に対する貸倒引当金もあります(所得税法施行令第144条第1項)。
個別評価の対象となるのは、簡単に言えば、債務者が法的整理の申し立てをするなど倒産しかかっている場合です。この場合には、一括評価(5.5%or3.3%)ではなく、別の計算が適用されることとなります。
個別評価が適用できる金銭債権は、言葉を選ばずに言えば、その取引先が倒産しかかっていて債権の回収がほぼ無理ということがわかっている場合です。事実認定が難しいので個別評価の貸倒引当金の設定が可能かどうかは慎重に検討する必要があります。
特に②は先方が債務超過であることを確認しないといけないので、決算書を入手する必要があり、先方が小さい会社の場合にはハードルが高いです。
①債権の切り捨て額が法的に決定されている場合
- 更生計画認可の決定
- 再生計画認可の決定
- 特別清算に係る認可の決定
- 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、(イ)債権者集会の協議決定で合理的な基準で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの、(ロ)行政機関、金融機関その他第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容が(イ)に準ずるもの
→その事実が生じた年の翌年以後5年を経過した後に弁済される金額(担保権の実行その他取立ての見込みがある部分の金額を除く) を貸倒引当金として費用化できます。
②回収不能の金銭債権と認められる場合(①に該当するものを除く)
- 金銭債権の債務者について、債務超過の状態が相当期間継続し事業の好転の見通しがないこと
- 災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたこと
→金銭債権の額のうち、取立て等の見込みがないと認められる金額を貸倒引当金として費用化できます。
③法的整理の申し立て等が行われている場合(①②に該当するものを除く)
- 更生手続開始の申立て
- 再生手続開始の申立て
- 破産手続開始の申立て
- 特別清算開始の申立て
- 手形交換所による取引停止処分
- 電子記録債権法第2条の第2項に規定する電子債権記録機関(一定の要件を満たすもの)による取引停止処分
→金銭債権の額の100分の50に相当する金額(実質的に債権と認められない部分の金額等を除く)を貸倒引当金として費用化できます。
貸倒引当金の節税効果
期末時点に売掛金などが計上されることが見込まれる場合、貸倒引当金を計上することで必要経費が増加し課税所得が下がるため、その年の節税につながります。
しかしながら、翌年には、その貸倒引当金は全額繰り戻されて、戻入益が収益計上されることとなります。そして翌年末時点の売掛金などに対して貸倒引当金を計上し繰入額を必要経費を計上することとなります。年末の売掛金の残高が、年を経ることにどんどん大きくなっていくのであれば、貸倒引当金の繰入額(必要経費)が大きくなってその分税金が安くなるということになります。
以上のように、貸倒引当金は永続的に税金を安くさせる効果はなく、翌年以降に課税を繰延べる効果があるということになります。
節税というと、その年に税金が安くなるという効果にばかり目が行きます。しかし、節税方法のほとんどは税金の繰延べを行うものですので、翌年以降の課税関係も考えながら適用を検討する必要があります。
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